ジェラートピケは、日本のブランドです。
東京に本社がある会社が、2008年の秋に立ち上げたルームウェアのブランドです。
イタリア語とフランス語をくっつけた名前なので海外っぽく見えますが、生まれも育ちも日本。
| ブランドの国 | 日本(東京) |
| デビュー | 2008年秋 |
| 運営会社 | 株式会社マッシュスタイルラボ |
| 名前の意味 | アイスの生地 (伊:gelato + 仏:pique) |
| コンセプト | 大人のデザート |
名前にどんな意味があるのか、サッカー選手が由来という噂は本当なのか、タグに書いてある「中国」は何なのか。
気になるところを、ひとつずつ片づけていきます。
ジェラートピケはどこの国のブランドなのか
ジェラートピケは
東京に本社を置く日本の会社が展開しているブランドです。
イタリアの会社ともフランスの会社とも、資本のつながりはありません。
海外の有名ブランドが日本に上陸したわけでもなく、海外ブランドと提携して作られたわけでもない。
企画もデザインも、日本人のチームが日本でやっています。
運営しているのは東京の株式会社マッシュスタイルラボ
ジェラートピケを作っているのは
株式会社マッシュスタイルラボという日本の会社です。
公式サイトの会社概要によると、本社は東京都千代田区麹町5-7-1の麹町ダイビル。
代表取締役社長は、近藤広幸さんという人です。
ちなみに「本社は港区南青山」と書いているサイトも見かけますが、公式サイトに載っている住所は千代田区の麹町のほうです。
ブランドがスタートしたのは2008年の秋。
マッシュスタイルラボが出しているプレスリリースにも、「2008年秋にデビュー」とはっきり書かれています。
スナイデルやフレイアイディーといった、名前だけは聞いたことがあるブランドを次々に当ててきた会社です。
そのなかでもジェラートピケは、いちばん大きく育った看板ブランドという立ち位置になっています。
イタリアやフランスのブランドだと思われる3つの理由
日本のブランドなのに、なぜここまで海外っぽく見えるのか。
理由ははっきりしていて、大きく3つあります。
- 名前が横文字
「gelato」はイタリア語、「pique」はフランス語。日本語の要素がひとつも入っていません - 世界観がヨーロッパのお菓子屋さん
パステルカラー、やわらかい照明、スイーツみたいな見せ方。日本のパジャマ売り場の空気とはまるで別物です - カフェまである
クレープやジェラートを出す「ジェラート ピケ カフェ」も展開しています。服とスイーツを両方やっている時点で、なんとなくヨーロッパのブランドっぽく感じてしまいます
つまり、海外っぽく見えるのは狙ってそう作っているからです。
「どこの国だろう」
と迷った時点で、ブランドの世界観づくりは成功している、とも言えます。
gelato piqueという名前の由来はイタリア語とフランス語
gelato piqueという名前は、直訳すると「アイスの生地」という意味です。
イタリア語の「gelato」と、フランス語の「pique」をくっつけた造語。
ひとつの言語で完結していないので、辞書を引いても出てこないのは当たり前なんです。
gelatoはイタリア語のアイスクリーム
前半の「gelato」は、イタリア語でアイスクリームのこと。
日本でも「ジェラート」で通じるので、ここはイメージしやすいと思います。
もう一歩さかのぼると、この言葉は「凍る」という意味の動詞gelareが変化したものです。
もともとは「凍ったもの」という意味だったのが、そのままお菓子の名前になった、という流れ。
だからgelatoという言葉は、お菓子の名前であると同時に、ひんやりして、口に入れるととろけるという感覚そのものを指しています。
piqueはフランス語の織物ピケ織り

後半の「pique」は、フランス語でピケ織りという織物のこと。
表面に細かい凹凸が浮き出る織り方で、ポロシャツの生地といえば手触りが浮かぶ人も多いはずです。
ヨーロッパでは、赤ちゃんの服や子ども服にも古くから使われてきた織り方です。
そしてこのpiqueも、もとをたどると「刺す」という意味の動詞piquerが変化した言葉。
針で刺してできた凹凸、というところから織物の名前になっています。
2つ合わせてアイスの生地という造語になる
ジェラート(アイスクリーム)とピケ(織物)。
2つ並べると「アイスの生地」になります。
アイスクリームみたいにとろけて、肌の上をすべっていく生地。
着心地をそのまま名前にした、というわけです。
おもしろいのは、gelatoもpiqueも
もとは動詞が変化してできた「〜された状態」を表す言葉だということ。
凍らされたもの、刺されたもの。
どちらも「モノの名前」というより「状態の呼び名」なんです。
着るものの名前なのに、生地の状態を表す言葉だけで組み立てられている。
ここまで来ると、単なる語呂合わせではなさそうだな、という感じがしてきます。
大人のデザートというコンセプトは素材の名前にもつながっている
ジェラートピケが掲げているコンセプトは、大人のデザートです。
お部屋の中のファッションを、デザート感覚で楽しんでもらう。
ブランド名の「アイスの生地」と、まっすぐつながっています。
おもしろいのは、この考え方が商品の素材名にまで貫かれているところ。
- ジェラート
ブランドの代名詞になっている、もこもこ素材 - スムーズィー
さらっとした肌ざわりの素材 - パウダー
粉のようにやわらかい風合いの素材
ぜんぶ食べもの、もしくは食感の名前です。
だからパジャマやルームウェアを選ぶときも、「今日はジェラートの気分」「夏はスムーズィー」みたいな選び方ができる。
ブランド名の由来を知ると、商品ページのタグに書いてある呪文みたいなカタカナが、急に読めるようになります。
名前の由来はサッカー選手という噂はどこまで本当なのか
「サッカー選手が由来です」と会社が公式に発表したことは、一度もありません。
ただ、そう言われてしまうだけの状況証拠は、けっこうそろっています。
ここは順番に見ていったほうが早いです。
同じ会社のブランド名にサッカー選手が並んでいる
噂の出どころは、ジェラートピケ単体ではありません。
同じマッシュスタイルラボが持っているブランドの名前を並べてみると、こうなります。
| ブランド名 | 似ている選手 | その選手の代表国 |
|---|---|---|
| SNIDEL (スナイデル) | ヴェスレイ・スナイデル | オランダ |
| gelato pique (ジェラートピケ) | ジェラール・ピケ スティーヴン・ジェラード | スペイン イングランド |
| Mila Owen (ミラオーウェン) | ロジェ・ミラ マイケル・オーウェン | カメルーン イングランド |
ここまで並ぶと、偶然と言い切るのはさすがに苦しい。
サッカーメディアのQolyも、はっきり明言はされていないものの、サッカー好きの社長の意向によるものだろう、という見方を紹介しています。
ただし、全部がサッカーというわけでもありません。
同じ会社の「FRAY I.D」は、金曜日を意味するFridayと、そこに隠れているID(自分自身)が由来だと説明されています。
つまり「この会社のブランド名はぜんぶサッカー」ではない、ということ。
ジェラール・ピケという実在の選手がいる
噂の中心にいるのが、ジェラール・ピケという選手です。
1987年生まれ、スペインのバルセロナ出身。
FCバルセロナの下部組織で育ち、のちに主将のひとりまでのぼりつめたディフェンダーです。
スペイン代表としても、2010年のワールドカップ優勝を経験しています。
カタカナで書くと「ジェラール・ピケ」と「ジェラート ピケ」。
サッカーを見ている人がブランド名を聞いて二度見してしまうのも、まあ無理はないです。
彼女の部屋着のタグを見て固まった、というサッカー好きの声はけっこう多いです
時系列で見ると説明がつかないところもある
ここが、いちばんおもしろいところです。
ブランドが生まれた年と、選手が有名になった年を並べてみます。
| 年 | ブランド側 | ジェラール・ピケ側 |
|---|---|---|
| 2004年 | – | バルセロナの下部組織から マンチェスター・ユナイテッドへ移籍 |
| 2005年 | スナイデルが スタート | イングランドで 出場機会を探している時期 |
| 2008年5月 | – | バルセロナへ復帰 |
| 2008年秋 | ジェラートピケが デビュー | 復帰した直後。 まだ実績はこれから |
| 2009年 | – | 3冠を経験し スペイン代表デビュー |
| 2010年 | – | ワールドカップ優勝 |
並べてみると、引っかかるところが出てきます。
ブランドがデビューした2008年の秋の時点で、ジェラール・ピケはまだ「これから」の選手だったんです。
バルセロナに戻ってきたばかりで、日本での知名度はほとんどありません。
ピケの名前が世界に知れ渡るのは、この翌年からです。
ブランド名は商品より先に決めるものなので、命名の作業はもっと前になります。
つまり「有名な選手の名前をもらった」という説明は、ピケに関してはタイミングが合いにくい。
一方でスナイデルのほうは、事情が違います。
ヴェスレイ・スナイデルは2003年にはオランダ代表としてプレーしていて、ブランドがスタートした2005年の時点ですでに世界的な存在でした。
ミラオーウェンの2人も、1990年代のワールドカップで名前を残した選手です。
こうして整理すると、こんな見え方になります。
- スナイデルとミラオーウェンは、時期も知名度もきれいに合う
- ジェラートピケだけ、ピケがまだ無名だった時期に名前がついている
- そもそも「ジェラート」はイタリア語の普通の単語で、選手名のGerrardとはつづりも別物
サッカー好きの社長が、下部組織出身の若手として当時からピケを知っていた可能性はあります。
ただ、そこから先は誰にも確かめられません。
公式に発表された由来はあくまでアイスの生地
結局のところ、答えはここに戻ります。
ブランドとして説明されている由来は、イタリア語のgelatoとフランス語のpiqueを合わせた「アイスの生地」。
ブランド名の由来をまとめている名前の由来・意味.comも、サッカー選手説は噂であって正式に発表されたものではない、と書いています。
会社が言葉にしていない以上、サッカー説は「そう読める」という話どまりです。
雑談のネタとしては最高。
でも
「サッカー選手が由来のブランドだよ」
と言い切ってしまうと、そこは事実から半歩はみ出します。
言うなら
「サッカー選手の名前と読み方がそっくりで、同じ会社のブランドも軒並みそうなんだよ」
まで。
このくらいがちょうど正確です。
日本のブランドなのにタグに中国と書いてあるのはなぜか
ブランドの国が日本であることと、その服が日本で縫われていることは、まったく別の話です。
買ったジェラートピケのタグに「Made in China」と書いてあって、あれっと思った人もいると思います。
あれは偽物のサインでもなければ、日本ブランドという説明がウソだったわけでもありません。
ここは仕組みを知ってしまえば、一発で腑に落ちます。
どこの国という質問には2つの意味がある
「ジェラピケってどこの国」と調べる人の頭の中には、じつは2つの別の質問が混ざっています。
| 質問 | 意味しているもの | 答え |
|---|---|---|
| どこの国の ブランド | 誰が企画して 誰が売っているか | 日本 |
| どこの国の 製品 | どこの工場で 縫われたか | 商品ごとに違う (中国などが多い) |
この2つがごちゃまぜになったまま調べると、いつまでもスッキリしません。
タグに書いてある国は、後者の答えです。

衣料品の原産国は縫った国と決まっている
服のタグに書く「原産国」には、はっきりしたルールがあります。
消費者庁が示している商品の原産国に関する不当な表示の考え方では、衣料品の原産国は縫製をした国になります。
デザインした国でも、生地を作った国でもありません。
たとえばイタリアの生地を中国で縫って、日本でタグを付けた服。
この場合の原産国は、中国です。
日本でちょっと加工を足したくらいでは、原産国は変わりません。
逆に、日本のブランドだからという理由で「Made in Japan」と書くことは、してはいけないことになっています。
そこを偽ると、消費者に誤解させる表示として問題になるからです。
つまり、タグに正直に縫製国が書いてあるのは
ルールをちゃんと守っている証拠のほう。
不安になるポイントではなく、むしろ逆です。
それでも日本のブランドと呼ばれる理由
では、縫っているのが海外なら、どこがどう日本なのか。
ブランドの中身を分解すると、こうなります。
- 企画・デザイン
東京の会社が日本のチームで考えている - 品質の基準づくり
どこまでの肌ざわりを合格とするかを決めているのは日本側 - サイズ・表示
日本の体型と日本の法律に合わせて作られている - 問い合わせ先
国内の会社。日本語でそのまま聞ける
工場は借りている場所であって、ブランドの頭脳ではありません。
だから「どこの国のブランド」と聞かれたら、答えは日本のままで変わらない。
タグの国は、その1枚がどこで縫われたかという製造の履歴です。
運営会社マッシュスタイルラボと世界での広がり
ジェラートピケを運営しているのは
もともとCGの制作会社だったマッシュスタイルラボです。
アパレル畑からスタートした会社ではありません。
この生い立ちを知ると、あの世界観のつくりこみに納得がいきます。
ジェラートピケを生んだのはどんな会社か
創業者の近藤広幸さんは、もとは建築や空間のデザインをしていた人です。
1998年にCG制作の会社として立ち上げ、翌1999年にマッシュスタイルラボへ社名を変えました。
ファッションに手を出したのは2005年から。
同じ年にスナイデル、その3年後の2008年にジェラートピケが生まれています。
いま持っているブランドを並べると、こんな顔ぶれです。
| ブランド | どんな服か |
|---|---|
| gelato pique | 部屋で着るルームウェア |
| SNIDEL | 甘めで女性らしい外出着 |
| FRAY I.D | 少し大人っぽいきれいめ |
| Lily Brown | 個性的な柄が得意 |
| Mila Owen | ベーシックな大人カジュアル |
服だけではありません。
コスメキッチンのようなコスメの店、クレープを出すジェラート ピケ カフェ、飲食店まで手がけているグループです。
もとがCGとデザインの会社だったので、世界観を丸ごと作るのが本業みたいなもの。
ジェラートピケが「服」ではなく「お部屋の中のファッション」という新しいジャンルから作られたのも、この体質と地続きです。
ニューヨークやアジアにも店舗がある
ジェラートピケは、日本の中だけのブランドではありません。
マッシュスタイルラボは2011年に上海・台北・香港に現地の会社を作り、アジアへ広げました。
そして2018年の秋には、ニューヨークに路面店をオープンしています。
会社のプレスリリースでも、国内外で愛されるグローバルブランド、という言い方をしています。
おもしろいのは、海外での受け止められ方です。
日本人が「イタリアのブランドかと思った」と言っている横で、海外の人は「日本のかわいいルームウェア」として買っている。
同じブランドなのに、国をまたぐと見え方がひっくり返ります。
横文字の名前は、日本人にとってだけ「海外っぽい」ということなのかもしれません
残りの疑問をまとめて片づける
ここまでで大きな疑問はだいたい解けたはずなので、本文で拾いきれなかった細かいところを最後に3つだけ。
ジェラートピケは日本製ですか
ブランドは日本ですが、商品が日本で縫われているとは限りません。
服の原産国は縫製をした国で決まるため、海外の工場で作られたものは、そのままタグにその国名が入ります。
気になる場合は、買う前に商品の品質表示タグを見れば、その1枚がどこで縫われたかを確認できます。
偽物や並行輸入品を避けるにはどうすればいいですか
いちばん確実なのは、公式のオンラインストアか、百貨店やショッピングモールに入っている直営店で買うことです。
フリマアプリや見慣れない通販サイトには、正規ではないものが混ざることがあります。
相場からかけ離れて安いときは、いったん立ち止まったほうが安全です。
ジェラール・ピケ本人とブランドに関係はありますか
公式に発表されている関係はありません。
本人がブランドのモデルを務めたり、監修に入ったりしているという事実も確認できません。
名前の読み方がそっくりで、同じ会社の別ブランドもサッカー選手を思わせる名前が並んでいる、というところまでが言えることです。
横文字の名前でも中身は日本生まれのルームウェアブランド
ジェラートピケは
東京の会社が2008年の秋に立ち上げた日本のブランドです。
名前はイタリア語のgelatoとフランス語のpiqueを合わせた「アイスの生地」という造語。
サッカー選手が由来という話は、状況証拠はそろっているものの、会社が認めた事実ではありません。
迷ったときは、質問を2つに割って考えるのがいちばん早いです。
- 誰が作って売っているブランドか
→ 日本。これは商品が変わっても変わらない - その1枚をどこで縫ったか
→ タグを見ればわかる。商品ごとに違う
この2つを分けてしまえば、タグの国名を見てもう迷うことはなくなります。
次に店頭やオンラインで手に取るときは、素材の名前を見てみてください。
ジェラート、スムーズィー、パウダー。
ぜんぶ「アイスの生地」という名前から一本の線でつながっている、と気づいた瞬間、あのブランドはただの部屋着売り場ではなくなります。
